【METRIKA with:株式会社バクテリコ 菅沼 名津季さん】腸内細菌の力で人々の健康をサポートするbacterico。 データを使うことでMETRIKAと一緒に変えていきたい医療の未来。

データサイエンス・AIを武器にデータと戦略を紡ぐMETRIKAが、様々な領域で活躍する人々と対談する「 METRIKA  talk」今回は、腸内細菌で人々の心とカラダの健康を創るbactericoの代表 菅沼名津季さんをお招きし、METRIKA CEO小林とCOO澤村、CCO増田の3人で、データサイエンスと医療を掛け合わせて解決したい社会問題について語ります。

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⁠あまり知られていない腸内細菌の重要性

増田:bactericoさんについて教えて下さい。

菅沼:bactericoは「腸内細菌とともに人々の健康と幸せを創る」というミッションを掲げて、腸内細菌をメインとした研究やサービス提供を行っている会社です。腸内細菌の研究は比較的新しい分野なので、研究の余地がまだまだあると言われています。腸の中にどんな菌がいて、どんな風に作用するのかが、ちょっとずつ解明されてきている段階です。

増田:そもそも腸内細菌とは、どういうものですか?

菅沼:腸内には1000種類以上の細菌が住んでいると言われています。それぞれが善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分類され、チーム対抗椅子取りゲームをしているイメージです。腸に入ってくる餌を食べることによって増殖し、数の力でゲームに勝とうとしています。

澤村:昔から、医食同源と言いますよね。食べるものによって腸内の状態が変わり、それが他の体の健康や、脳に対しても大きな影響を与えていると。

菅沼:腸は私たちが生きてゆく上で無くてはならない存在です。脳を持たずに生きている動物はいるけど、腸を持たずに生きている動物はいません。なぜなら、栄養がとれないと死んじゃうから。生物の体は、腸が初めにできたと考えられています。

⁠病気になる前に、病気を防ぐ

澤村:データサイエンスの領域にいるMETRIKAと、腸内細菌を主とする医療の領域にいるBactericoが協力すれば、解決できる社会問題がいくつもあると考えています。

増田:というと?

澤村:いくつかありますが、一つ目は「未病」に取り組むこと。未病は、発病はしていないけどその病気の兆候がみられるような状態です。通常は、何か症状が出てから病院に行きますよね。でも未病段階で病気を察知し、防ぐことができれば、それに越したことはありません。しかし、人々の未病にまつわるデータが圧倒的に少ないのが現状です。なぜなら、未病の段階で病院に行くことがないから。見つかるとすれば、年一の健康診断くらいしか機会がありません。

増田:確かに、健康状態のデータを取ることって普段ないですよね。

澤村:なので未病段階で病気を防ぐためには、自分の健康状態を常に把握しておく必要があります。

増田:なるほど。

澤村:加えて、未病に影響するものはたくさんあります。たとえば、生活習慣やお仕事、ストレスに家族構成......。色んな要素が組み合わさって影響しているからこそ、ビッグデータが必要です。医療のデータと個人のデータを統合することで、できることが広がっていくんですよね。そこは、METRIKAがお手伝いできる領域です。

菅沼:一方、データを取ることは手段であり、そこに科学的見解を加えて、実際に人々の行動へと落とし込んでいく作業が必要です。そこはbactericoができること。なので、一緒に挑戦できたら素敵だと考えています。

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⁠自分の健康状態をカジュアルに自分で管理する

澤村:二つ目に、僕は病院が個人のデータを持っていることにも違和感があって。自分のデータなんだから、本当は自分で管理できるような仕組みを作りたいんです。

菅沼:以前は定住が普通で、それぞれの家族に地元のかかりつけ医がいました。だから個人のデータが、病院にあってもよかったのです。でも今は他拠点や、海外に出ることが当たり前になりました。旅先で病院にいかなきゃいけない、なんてこともあると思います。

小林:自分でデータを管理しつつ、必要なときにすぐ取り出せる状態が最も効率的で、理想的な状況です。しかし一般的にみると、医療もデータも、専門的で難しい領域です。

増田:まさしく。どちらも「先生お願いします」状態になってしまうんですよね。自分で管理することに対しても、どうすればいいのかわからない。自分のデータを見たところで、全然理解できないだろうし。

澤村:本当にその通りです。なので「自分で自分の健康状態に関するデータを持つ」をカジュアルな状態にまで持っていくことには、クリエイティブの力が必要になります。

菅沼:実際にこんなものもあります。腸内細菌を採取するためのキットなんですが、可愛いですよね。ここを便に挿すだけでつかえるんですよ。

増田:おしゃれですね!デザインもちゃんとしているし、持ち歩けそう。子どもも喜びそうですね。

菅沼:非常用として、バッグに忍ばせておくこともできますよね。他にもシートの色が酸性かアルカリ性で反応することで、腸内細菌の状態を教えてくれるおしりふきを作ろうとしています。分かりやすくて面白いでしょ。

小林:健康診断の結果ですら理解するのが難しいのが現状です。でもそこで諦めるのではなく、その話題がカジュアルにSNSで話されたり、多くの人がもっと健康に対して興味を持てるくらいのレベルまで寄り添えると、ベストだと思っています。

⁠髪を切りながら、健康に、美しくなれるサービス

澤村:ここまで健康についてのデータを取ること、持つことについてお話ししていましたが、一番重要なのはその方法ですよね。でも正直な話、普段の生活で健康を意識することってあまりないと思います。僕も仕事で全然寝られない日や、生活習慣がボロボロになってしまう時期があります。自分を酷使した代償が10年以上後に返ってくると思うと、少し怖い(笑)。

増田:わかる(笑)。

澤村:でも当たり前ですけど、日々の健康って仕事の生産性に直結してきます。疲れにくくなるとか、目覚めやすくなるとか。肌や髪の状態だって、色んなところに影響を与えているはずです。なので、自分がどんな健康・美容状態になりたいのかと理想を形成するところから、実現までをノンストップで提供できたらいいなと思っています。

増田:健康や美容を促進することで、生活、ひいては仕事にも良い影響がでてくるのはモチベーションになりますよね。具体的なアイディアはあるのでしょうか。

澤村:自分の健康状態を常に把握するならば、日常に落とし込むのが最適だと考えています。そうすると、美容室がちょうどいいと考えています。最近は外出も減ったので、日々のなかで習慣的に訪れる場所として最適だと思うんです。髪の毛を切りにいくと、ついでにここ1ヶ月の食生活や健康状態もわかるような仕組みがあればいいですよね。「タンパク質足りてないですね」とか「ビタミン良い感じですね」とか、そういう会話が美容室で行われるのが理想です。

増田:ということは、髪の毛がデータになるんだ。

菅沼:体は全て、腸で吸収したものが根本となって作られています。なので髪の毛も、腸内細菌の状態が多く関係していると思います。

澤村:加えて、感情のベクトルが揃ってるんですよ。髪を切ることは手段で、目的は綺麗になりたい、清潔感を保ちたいという部分にありますよね。外見を整えることと内面を整えることは隣り合わせなので、外と内、髪と腸を整えにいきませんかという文脈で、繋げることができるのではないでしょうか。

菅沼:やっぱり外側が綺麗な人は内側が綺麗です。美容の7割は内側から作られると大手化粧品メーカーの方からお伺いしたことがあります。

増田:髪を切ってもらうときによく「この人みたいにしてください」と言う方がいるけど、それなら内側からも自分を変えていこうってことですよね。

澤村:そうそう。極論、憧れの芸能人に似せた髪型で切ってもらったあとに、この芸能人の腸はこのくらい整っているから、腸もそこに近づけていきましょう。そのために、食事の改善、肌質や髪質の改善はこのように行っていきましょうと提案していきたい。

小林:日常生活の中で体の内側に目を向ける機会は少ないからこそ、美容室で体の内側まで提案してもらえると、自身の健康状態を考えるきっかけになっていいと思います。自分の状態やなりたい理想を、髪の毛で知ることができるとすごく面白い。

⁠現状をより良くしていくための努力を

澤村:その流れでもう一つ考えているのは、メンタルヘルスの領域です。特に日本は早急に取り組むべきですよね。

増田:メンタルの状況を自分で把握するのは、体の健康よりも難しい気がします。だから自分の悲鳴が聞こえないまま頑張っちゃって、気がついたら病んでしまう人が多いと聞きます。

澤村:どこかに兆候はでているはずなんです。でもそれを外に見せないような方が、メンタルを壊しやすいのだと思います。なので数値として自分で把握できる状態や、可視化する機能が必要だと考えています。

菅沼:私も、うつ病をなくしたいという想いがずっとあります。腸内細菌がアルツハイマーや鬱病、アレルギーにも関わっているという研究があるのです。もちろん他の病気も、腸内環境を良くすることで防ぐことに繋がると考えています。

増田:研究者の方が言うと、説得力がありますよね。

小林:人間の体はわからないことばかりです。一方でそれは、様々な可能性があるという裏返しでもあります。

菅沼:研究をやりながら、一つずつ解明していくしかありません。「間違っているかも」っていう懸念を抱えながらも、進んでいかないと何も変わらない。なので研究もデータの発展も、現在できるベストを尽くすことが一番大切だと思っています。

菅沼 名津季(Natsuki Suganuma)

株式会社bacterico 代表 

菅沼 名津季(Natsuki Suganuma)
愛知県出身。国立名古屋大学創薬科学研究科博士前期課程修了後、江崎グリコ株式会社に入社。健康科学研究所にて腸内細菌の研究に従事。「世界を健康に幸せにする」という夢を叶えるために、株式会社bactericoを創業。その後、慶應義塾大学の教員として母子の健康にかかわる研究に携わる。 腸内細菌は人それぞれ異なっており、そのヒトの腸内細菌にあった食事の提案や商品を届けることでみなさんの健康をサポートしている。